海便り

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海便り

 僕の名前は小笠原(おがさわら) 海斗(かいと)。  どちらかといえば山の近くで産まれた。  生後10ヶ月で、山のふもとのお寺の隣の、わかば保育園に入れられた。  そこで運命の出会いをする。  (もも)は生後9ヶ月で僕と同じさくら組さんに入った。  並んで眠る赤ちゃん時代のふたりの写真は、僕の宝物だ。  一年後に闖入者が。  (りく)は生後一年10ヶ月で、チューリップ組さんのときに入ってきた。  この頃から、先生が撮ってくれた僕と桃の神聖なる写真に、陸が写り込んでくるわけだけど。  陸は、まあ、いいやつだ。  小さな頃から身体もでかいし、態度もでかかった。だけど、僕をいじめるやつを許さなかった。  僕は桃とごっこ遊びをしたり、絵本を読むほうが好きだったのに。  何故だかそういうのが気に食わないっていう奴がいる。  そういうときに陸がジャングルジムから飛び降りて来て、僕の代わりにそいつに怒鳴る。 「その、びんぼうぐさと土のかたまりはケーキだって!何回言ったら分かるんだよ!こわすな!!」  陸のあまりの剣幕に桃までびっくりして泣き出す。  桃の伏せたまつげ。ピンク色のまぁるい頬に落ちる涙。  桃ちゃんが泣いちゃった、と言って泣きそうになる僕。  困った顔で僕と桃を見比べながら、どろんこケーキを作り直す、陸。  陸の爪に入り込んだ茶色。  日に焼けた手指。  
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