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5 答え合わせ
地下牢の鍵を開け、横たわるエリアに声をかけた。
「起きてる……?」
「ああ」
意外にしっかりした声で即答され、私は洟をすすった。溢れそうになる涙を圧し止めているのは、彼が、まだ私を愛してくれているのか自信がなかったからだ。
「パンを持って来たの。あと、猪肉とミルク」
「君は、憎んでいないのか?」
彼の若い声が掠れた。
私はエリアの傍に跪き、トレイを置いて膝の上で手を握り合わせる。
「どうして……?」
私の声も掠れている。
答えをどう尋ねるべきか、わからなかった。
「あなたに嫌われるような事をしたから当然よ」
それが、若すぎる継母の結婚への懺悔なのか。
それとも、前回で嫌われるように妖婦を演じた事なのか。
どちらでも受け取れるように呟いていた。
でも、私が計りあぐねているように、エリアも確信を持てずにいるなら。
もし違ったら、私はただ変な女と思われるだけなのだから、正直に打ち明ける事にした。
「あなたを救いたかったから、必死で夫の気を引いたの。だって私たち、恋に落ちなければ、あなたを死なせる事もなかった。あなたが私を嫌ったままでいてくれたら安全だと思ったの」
でも彼の嫌悪は憤りを越え、前回、私を絞殺した。
あのとき呟いた、あの言葉。
「私の首を絞めた時、懺悔の事を言っていたでしょう? 処刑の時、淫らな女だから懺悔を拒んだんだろうってあなたは思ったのよね。言い訳だけど、違うの。必要なかったの。あなたが殺されてしまうのよ。地獄だわ」
呟きながら涙が零れた。
「あなたの……首が、吊るされたの……私の牢に」
「……」
エリアが大きく息を吸った。
昏い地下牢の中に帰ってきて、あの光景が鮮明に蘇る。
胸の張り裂ける痛みも、彼を喪った絶望も、生々しく私の中にあったから。
もう言葉が続かずに泣きじゃくった。
「フローラ」
「……!」
エリアが身を起こし、強く私を抱きしめた。
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