5 答え合わせ

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 すべての輝かしい愛の日々が蘇り、私はエリアを抱き返して泣き叫んだ。震える手でしがみつき、彼の体温や、覚えているより少し細い少年の体付きや、匂いや、髪や頬の感触を貪った。 「すまなかった。やり直す奇跡を神が与え賜うたと思ったのに、君があの男に夢中で気が狂ったんだ。でもあとで、君の侍女から聞いた。君はいつも耐えていたって。自分に、逃げるなと言い聞かせていたって」 「……」  ひとりきりのとき。  侍女たちを人とも思わず、入浴中や着替えの時、たしかに独り言を洩らしたかもしれない。   「愛してるわ、エリア……!」 「君を手に掛けた。もうそんな資格は、ないのに……!」 「愛してるわ!!」  エリアが性急に抱擁を解き、私の顔を掌で挟む。激しい口づけだった。  ああ、エリアだ。  私の愛する、エリア。 「あなたを守れなかった。ごめんなさい」 「いいんだ、フローラ。僕が君を守るべきだった。あの悪魔を人間だと信じていた僕が愚かだったんだ。最初から戦えばよかった。君と逃げていれば……!」  エリアが息をのんだ。  そして私の手をとり、立ちあがる。 「逃げよう」  私たちは息を潜め、足音が立たないように裸足で屋敷を抜けだした。  そして月灯りだけを頼りに中庭を駆けていた、その時。 「!」  エリアの肩に斧が刺さり、彼が倒れた。   「……あ……」  振り返ると、燭台を持つ誰かがいた。  それが誰かはわかっていた。 「フロー……ラ……」  前のめりに倒れたエリアが、横向きになって私を呼んだ。  最初に彼の生首を見た時より、辛かった。今のエリアは血を流し、苦悶に顔を歪めている。  力なく彼の傍に崩れ落ち、震える手で頬に触れた。  彼も、私の頬に触れた。 「逃げろ……!」 「行かないわ」  私はまた泣いていたけれど、そう囁いて、微笑んだ。   「あなたと一緒にいる」 「逃げ、ろ……」  背後に夫が立った。  エリアの肩から乱暴に斧を引き抜いた。そして、私の上で構えている気配がする。  確かめる価値もない。  私は、エリアと見つめ合っていたい。ひとりでは逝かせない。 「は……来るな、……生きて……くれ……」 「愛してるわ、エリア」  懐かしい死の感触に、私は身を委ねた。
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