熱中症手前の幻覚を文字に起こした物

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熱中症手前の幻覚を文字に起こした物

 人は誰しも前頭葉に小さな太陽を飼っている。  夏や、レースや、注射の後に額を融かそうと騒ぎ出す。 「先生、お水を下さいな」  歯医者も夏には大繁盛、水道設備が多いので。  だけど歯医者は門前払い、 「うちは水屋じゃありゃんせん」  保険適用外なので。  雨、雨、雨よ来い。  私の額を冷やしておくれ。  煙を焚けば雨が降るなら、ちょうど出てますよ。  歯医者が始めた新事業、ドリルと椅子の時間貸し。  自己責任で個人利用なら法に問われる由は無し。 「先生、お水を下さいな」  粉が飛び散り真っ白け、ザリザリするし目に入る。  だけど歯医者は幇助罪、 「ここは歯医者じゃありゃんせん」  免許剥奪されたので。  雨、雨、雨よ来い。  私の額を流しておくれ。  血潮も乾いて尽きたので、汁気不足です。  夕立が額を流す。  夕立が額を冷やす。  穴から染みた雨粒が血管を巡り始めた。  太陽に水蒸気が弾けて、割れるように痛い。  雨、雨、雨よ来い。  私の額を冷やしておくれ。  熱が抜けない。  雨、雨、雨よ来い。  私の額を流しておくれ。  何も見えないけど、まだ太陽が残ってる。
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