11 女神の素顔

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 気持ちのいい雲みたいな草原を歩いていると、どこまでも虹色の道が続いていて、私のその果てを確かめたくて歩き続けた。飛べそうなほど体が軽くて、力に満ちて、裸足のまま駆けだした。  でも、ふと、独りぼっちだと気づいた。     「……」  足を止め、振り返る。  なにか忘れている。   とても大切だったはずなのに、遠く離れてしまった気がする。  その懐かしいほうを見つめながら、後ろ向きで虹の果てにまた歩き出した。   「──!」  声が聞こえた。  私は虹の果てに行ってみたかった。  だけど、声のするほうへ、いま後にしてきたほうへ、引き返した。  爆風が吹いて虹の果てに飛ばされそうになった。だから風に逆らい走り出した。   「サラ!」  それは私の名前だ。  あれはオリヴァーの声だ。  愛するオリヴァー。 「ああ、サラ!」 「……」  目を覚ましたら、最高に体が怠くて気持ちが悪かった。  私はベッドに寝ていた。というより、一体化していた。夫が跪いて、私の手を握って、泣きじゃくっている。 「……やだ……うっかり、死にかけちゃった……」 「……っ、……サラ……愛してるよ、サラ。傍にいてくれ……ッ」 「当たり前でしょ……あなたのサラなのよ……好きよ、オリヴァー……」  さて。  その後、医者と産婆が驚くほど驚異的な回復を見せた私だけど、しばらくはオリヴァーに気が済むまで世話をさせてあげた。  驚いた。  私って、死ぬのね。  愛する人を悲しませるのもよくないし、愛する人がいつか死ぬなら、共に過ごす時間は1秒だって無駄にできないという事を学んだ。    男に生まれたかった。女に生まれた自分は不運だと思っていた。  でも私はそれから14年間かけて3男4女を産んで、すんなり女の生を受け入れ満足するようになった。  もちろんお淑やかにはできない。  領土拡大への興味も失せない。  兵隊や軍が大好きだ。  でも愛する夫と子供たちに比べれば、まあ、取るに足らない。                                (終)
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