10 愛のパレード

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10 愛のパレード

「あぁ~っはっは! ひゃっほぉーうッ!!」  検査の結果がとてもよかったらしく、ヨハン王子が城の周囲を歌い踊って回っている。 「……アホね」 「そうですか? とっても楽しそうですよ、王妃様!」 「ああそう。よく見ておきなさい。これで最後にしてやるから」  王子は超健康だった。  王妃はそれが面白くないみたいで、朝からずっとむっつりしている。  クロードは感心していた。   「んらったぁ~ルァ~♪ んばらうぇっそぉ~ん♪」  日頃から交流があるという踊り子を携えて、とても華やかなパレードだ。  花びらをいっぱい詰めたカゴを持って、色とりどりの花びらを撒き散らしながらもう2時間くらい、歌い踊っている。 「元気ですね。いやぁ、あんなに基礎体力があるとは思いませんでした」 「昔からうるさい子なのよ」 「芸術かぶれの軟弱者だというのは、どうやら誤解だったわけですね」  クロードは王妃にも率直に意見を述べる人だ。  私は窓から身を乗り出して、ヨハン王子に手を振った。 「殿下ぁ~!」 「んららっ!? イーリス! 愛しのイィ~リィィィィ~ッス!!」 「やっと言葉を発したわ」  王妃は、王子がなにをやっても気に入らない様子。  でも、私は王子はなにをやっても素敵だと思う。 「殿下ぁ~っ! 素敵なお歌ですねぇ~っ!!」 「イーリス! 君のために、身の潔白を証明したよッ!!」 「おめでとーーーございまぁーーーーすっ!!」 「ありがトゥッ!!」 「へいっ♪」 「やめなさい」  ぺしっ!  王妃に、お尻を叩かれた。  私はとにかく、王子に応援の意味も込めて、力いっぱい手を振った。  とてもハツラツと歌い踊るヨハン王子は、素敵すぎる!  この王子の様子を思い出して、永遠にニマニマできそうだ。 「イィィィリィィィィッス♪」 「でーんかぁーーーー♪」 「やめなさい」  王妃にスカートを引っ張られ、窓から引き剥がされる。   「落ちるわよ。イーリス、見たいなら下に行ってきなさい」 「えっ!?」  怒ってるのかと思ったら、王妃はむっつりとしたままだけど優しい事を言った。 「いいんですかっ!?」 「暑苦しいわ。ほら、遊んでらっしゃい」 「いってきます!」  私は駆けだした。
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