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スカートを持ち上げて、転ばないようになんて考える暇もなく、ひたすら足を繰り出した。最近はクロードの食事管理があって少し痩せた気がしていたけど、以前よりすごく体が軽い。
全速力で走って城を出ると、少し離れたところで花を撒いていた王子がすぐ私に気が付いてくれた。
「イーリス!」
「「「イーリス!!」」」
踊り子たちが私の名前を呼んだ。
ぴしっと揃っている。
すごい!
「殿下ぁ~ッ!」
「おいでイーリス!」
私は走って、走って、走って、王子の胸に飛び込んだ。
「!」
王子が私を抱えてクルクルッと回る。
踊り子たちが、王子と私に花びらをふぁさふぁさ振りかける。
「きゃぁ~♪」
最高に幸せな気分だ。
しばらく回って、王子は私を地面に下ろした。
「殿下」
とても息があがっていた。だって走ったから。
でも王子はキラキラ輝く笑顔で少しだけ息を弾ませて、私を見つめていた。
そしてふいに身を屈めて、私の唇にキスをした。
「────」
ぴゅー
ひゅーひゅー
踊り子たちが、花びらを振りかけながら口笛を吹いたり、ひゅーひゅー言っている。とても賑やかだ。
「息をして」
「……」
優しく囁く王子の声が、聞こえるけれど、ちょっと意味がわからない。
「ほら、イーリス。息をしてごらん」
「ひゅはっ」
「よしよし。んーっ」
「!」
またギュッと抱きしめられて、キスされた。
王子は私に、息をしてほしいのか、息を止めてほしいのか。
「ぷはっ」
「ははは。可愛いなぁ、イーリスは」
「ででっ、でんッ?」
「さあ、これを」
王子が、踊り子のカゴから一輪の花を見つけ出し、私の髪に挿した。
「うん、可愛い」
「……」
なんだか、驚いてるはずだったのに、ウキウキしてきた。
王子が手をつないでくれた。それで王子を見あげたら、嬉しそうに笑っていた。
「るんたったぁ~るんたったぁ~♪」
「たったぁ~♪」
私は王子に誘われるまま、スキップして一緒に踊った。
花びらを浴びて、踊り子の人たちと笑いあって、まるでお祭りみたいだった。
「王妃様!」
私が手を振ると、窓から王妃が小さく手を振ってくれた。
相変わらずむっつりしていたけれど、ほんの少しだけ優しく微笑んでくれたような気がした。
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