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13 新しい朝(※元王子視点)
新しい朝がきた。
素晴らしい朝だ!
「……すぅ……すぅ……カスタード……クリーム……ふっ」
「甘い夢を見ているんだね。もう少しおやすみ、イーリス」
「はぃ……」
あああ、僕の奥さんはどうしてこんなに可愛いんだ。
寝言も可愛ければ、寝言なのにいつも返事してくれるのがまた可愛い。
さて、朝だ。
クロンビー領は花の都にほど近く、それでいて海路にも合流しやすい。緑豊かで小さな湖と森を持つ、旅行者や芸術家を招くにはもってこいな土地だ。
早速、芸術アカデミーを開校した。
面倒を見ていた芸術家たちのための寮も、王都との往復便も準備した。
文化的な施設がないなんて寂しすぎる。劇場を建築中だ。
「おはよう! みんな!」
「「「おはようございます、御主人様!!」
中央階段でいつもの挨拶。
使用人たちが作業を置いて、広間に集まる。
「さあ! 朝の発声練習だ!!」
「「「はいっ、御主人様!!」」」
始まりは単純だった。
初日、使用人全員を集めて挨拶をしたのだ。よく見えるように、僕とイーリスは中央階段の上に立ち、使用人たちは広間に並んでもらった。
でも、仲良くなりたい。
一体感が大切だ。
「マママママママママァー♪」
「「「マママママママママァー♪」」」
「ンマァママママママァマママァ~♪」
「「「ンマァママママママァマママァ~♪」」」
陽気な人たちだ!
音階大合唱! ファンタスティックッ!!
「ホォォォーウ、ホォォォーウ、ホォォォーウッ♪」
「「「ホォォォーウ、ホォォォーウ、ホォォォーウッ♪」」」
高音もこなす。
「イェーイ♪ イェ~イ♪ イェーイ♪ イェ~イ♪」
「「「イェーイ♪ イェ~イ♪ イェーイ♪ イェ~イ♪」」」
グルーブに乗って体が動き出す!
「ンララァーッ! ハァァアアアアッ! ヒャウッ!」
「「「ンララァーッ! ハァァアアアアッ! ヒャウッ!」」」
パッション……!
「んん~、ふっふぅーう♪」
「「「んん~、ふっふぅーう♪」」」
ハミングはしっとり。
「んっツ、んっツ、んっツ、んっツ」
「「「んっツ、んっツ、んっツ、んっツ」」」
ビートはきっちり。
「どぅんッ、どぅんッ、どぅんッ、どぅんッ」
「「どぅんッ、どぅんッ、どぅんッ、どぅんッ」」
テノールとバス。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ♪」
「「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ♪」」
アルト&ソプラノ。
「アアアアアァァァァーーーー♪」
「「「アアアアアァァァァーーーー♪」」」
仕上げの調律。
僕は両手を掲げ、大きく丸を描くように拳を握った。
ピタッ、静寂。
みんな僕をジッ……と見つめている。
「讃美ッ!!」
「「「神に感謝!」」」
こうして讃美歌の大合唱から、クロンビー城の1日は始まる。
ああっ、素晴らしい朝だ!
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