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8 美しきイーリス嬢を求めて
「ご覧ください、陛下」
「これは?」
見せたいものがあると言われて王妃の部屋まで行くと、そこには既にクロードと見知らぬお爺さんがいた。いや、ちょっと違う。お爺さんと小父さんの間くらいの男性がいた。
「ああ、イーリス嬢。やっとお目見えですか」
「すみませんクロードさん」
「イーリス。こちらは画家のバジンカ」
「王妃様、参りました。はじめましてバジンカさん」
そしてもうひとり。正確には、もうひとつ。
可愛い乙女の肖像画がでんっと鎮座していた。バジンカは画家なのだから、彼が画いた絵のはず。
さすが、画家。
上手い!
「ちょうど本人が来たので結論から申し上げますと、この絵のうら若き可憐な乙女はイーリス嬢です」
「へっ?」
クロードが自信たっぷりに言い切るので、びっくりしてしまった。
王妃も眉をひそめ首を傾げている。
「と、とても私には見えませんけど……」
戸惑っている私を見て、クロードがますます勝ち誇った顔になる。
画家のバジンカ小父さんも、目を細めニマニマしている。
「そう! これは痩せた場合のイーリス嬢なのです!!」
「ほぉ」
叫んだクロードに王妃がなるほどという感じで頷いた。
「頬の肉を削ぎ落し、埋没した鼻や眼窩の輪郭を際立たせ、短そうな首を華奢に、丸みを帯びた肩をしなやかに、乳房の肉はきちんと残し、腰をきゅっと引き締めて、令嬢らしい気品あふれる立ち姿になったと仮定した場合のイーリス嬢の姿ですッ!」
「あなたには感心するわ、クロード」
「でっ、でも! 私、絵の代金をお支払いできません!」
「黙っていなさいイーリス」
「はい、王妃様」
王妃は椅子の上でちょっとだけ座る向きを変え、バジンカ小父さんに尋ねた。
「これは想像? それとも、医学的根拠に基づいた姿? つまり、痩せると本当にこうなるの?」
「私からご説明致しましょう!」
クロードが燃えている。
私よりずっと、発言権があるのだ。もう知ってる。
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