第32話 仕返し

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またここに戻ってくると思っていなかった。 隈井先生の指導のおかげでコンクール予選は難なく通ることができた。 本選会場は私が棄権した同じホール。 またここに戻ってくるなんて思ってなかった。 演奏の順番は虹亜がラスト。 そして、私がその前。 控え室は別々で私は顔を合わせることがなかった。 両親もなぜか私になにも言わないし、不思議だったけど、今はコンクールに集中できると思って気にしないようにしていた 「雪元さん。ファイナリストにやっぱり残ったわね」 「どうなるかしら。妹の虹亜さんは海外でも有名な先生に師事していたから、さすがに優勝は無理でしょ」 私のことを知っているのか、チラチラとこっちを見てひそひそと話している人もいた。 気にしないようにしようと思ってはいるものの、視線が痛い。 青のロングドレスに着替えると、なるべく他の人から距離を置いて控え室の椅子に座った。 「すみませーん」 控え室のドアが開き、コンクールの運営スタッフが顔をのぞかせた スーツを着た女の人がきょろきょろと部屋の中を見渡す。 誰かを探しているようだった。 「雪元さんはいますか?」 「はい。私です」 「隈井先生が呼んでいるって伝えて欲しいとお願いされて……」 「先生が?」 「ええ。こちらの控え室じゃなくて、運営スタッフの控え室のほうへきてほしいと言っていましたよ」 伝えるとほっとしたようにスタッフの女性はいなくなった。 こんなギリギリになって?
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