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またここに戻ってくると思っていなかった。
隈井先生の指導のおかげでコンクール予選は難なく通ることができた。
本選会場は私が棄権した同じホール。
またここに戻ってくるなんて思ってなかった。
演奏の順番は虹亜がラスト。
そして、私がその前。
控え室は別々で私は顔を合わせることがなかった。
両親もなぜか私になにも言わないし、不思議だったけど、今はコンクールに集中できると思って気にしないようにしていた
「雪元さん。ファイナリストにやっぱり残ったわね」
「どうなるかしら。妹の虹亜さんは海外でも有名な先生に師事していたから、さすがに優勝は無理でしょ」
私のことを知っているのか、チラチラとこっちを見てひそひそと話している人もいた。
気にしないようにしようと思ってはいるものの、視線が痛い。
青のロングドレスに着替えると、なるべく他の人から距離を置いて控え室の椅子に座った。
「すみませーん」
控え室のドアが開き、コンクールの運営スタッフが顔をのぞかせた
スーツを着た女の人がきょろきょろと部屋の中を見渡す。
誰かを探しているようだった。
「雪元さんはいますか?」
「はい。私です」
「隈井先生が呼んでいるって伝えて欲しいとお願いされて……」
「先生が?」
「ええ。こちらの控え室じゃなくて、運営スタッフの控え室のほうへきてほしいと言っていましたよ」
伝えるとほっとしたようにスタッフの女性はいなくなった。
こんなギリギリになって?
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