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ドンッと背中を突き飛ばされ、なにが起きたかわからず、転倒して床に膝をついた。
「虹亜!?」
驚き、顔を上げると鍵を手に笑う虹亜の顔が見えた。
「唯冬さんを使って私に仕返ししたつもり?」
「仕返しって……なんの話……?」
「しらばっくれないでよ!大恥をかかされたんだから!」
唯冬がなにをしたのだろう。
わからなかったけれど、虹亜は私が唯冬に頼んで嫌がらせをしたと思ってこんなことをしたのだということはわかった。
「これは私からの仕返しよ!」
「待って!本当に知らないの!」
「どこまでもしらばっくれるつもりなのね」
虹亜の目は憎しみに満ちている。
私の言葉なんて耳に入っていない。
階段下にある倉庫は物置になっていて、中に灯りはない―――あの部屋を嫌でも思い出してしまう。
「二回も同じコンクールで棄権しちゃったら、もう信用ガタ落ちね。また逃げたんだってみんな思うわよ」
慌てて立ち上がってドアに駆け寄ろうとした瞬間、バンッとドアが閉められ、鍵がかけられる音がした。
―――真っ暗な世界。
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