第33話 君の音【唯冬】

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そう、同じ会場だ。 千愛が棄権したコンクール会場は同じコンクールで同じ会場。 だからこそ、一緒にいるつもりだった。 それが、仕事? まったく納得いかない。 車から一番先に降りたのは知久で張り切って入り口に向かった。 遠足気分もいいところだ。 コンクール会場のロビーに入ると隈井先生がうろうろしているのが見えた。 「隈井先生、休憩ですか?」 前半と後半の途中休憩だろう。 気分転換にコーヒーでも飲みにきたか?と思っていると違っていた。 俺の顔を見るなり、早口でまくしたてた。 「渋木君!いいところにきた。雪元さんがいない。どういうことだと思う?会場に来ていたのは目にしていたんだが、今になって姿が見えないんだ!」 「千愛がいない!?」 「えっ!?千愛ちゃんが?」 「昼寝して寝過ごしてる……?」 「深月(みづき)君じゃあるまいし、そんなわけないだろう!」 隈井先生のこんなに焦った顔を見たことがない。 「休息は大事だよ」
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