第33話 君の音【唯冬】

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真面目な顔で逢生は言ったが、千愛に限ってあり得ない。 「これは……トラブルかもな。探そう。スタッフの誰かが千愛ちゃんの姿を見ていないか聞いてくるよ」 知久は険しい顔をしていた。 逢生と違ってすぐに察してくれて助かる。 なにがあった? ここにきて、いったい誰が千愛を妨害した? 「千愛の両親か妹のどちらかか」 「渋木君。なんて顔をしているんだ。まるで視線で人を殺せそうなくらいの顔じゃないか。君はそんな顔をするような人間じゃないだろう?」 「先生も周りも俺を買いかぶりすぎなんですよ。俺はそんな優しい人間なんかじゃないんです」 千愛を救いたいという気持ちは確かにあったかもしれない。 けど、結局は自分のために千愛をそばに置きたかっただけだ。 あの優しく触れる指を忘れられなくて。 彼女が欲しくて仕方なくて、俺から逃げれないようにしてしまった。 あの両親達と同じ。 閉じ込めた。 俺の―――― 「唯冬は優しい」 「逢生」 「少なくとも俺よりは面倒見いいし、他人に興味がある」
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