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真面目な顔で逢生は言ったが、千愛に限ってあり得ない。
「これは……トラブルかもな。探そう。スタッフの誰かが千愛ちゃんの姿を見ていないか聞いてくるよ」
知久は険しい顔をしていた。
逢生と違ってすぐに察してくれて助かる。
なにがあった?
ここにきて、いったい誰が千愛を妨害した?
「千愛の両親か妹のどちらかか」
「渋木君。なんて顔をしているんだ。まるで視線で人を殺せそうなくらいの顔じゃないか。君はそんな顔をするような人間じゃないだろう?」
「先生も周りも俺を買いかぶりすぎなんですよ。俺はそんな優しい人間なんかじゃないんです」
千愛を救いたいという気持ちは確かにあったかもしれない。
けど、結局は自分のために千愛をそばに置きたかっただけだ。
あの優しく触れる指を忘れられなくて。
彼女が欲しくて仕方なくて、俺から逃げれないようにしてしまった。
あの両親達と同じ。
閉じ込めた。
俺の――――
「唯冬は優しい」
「逢生」
「少なくとも俺よりは面倒見いいし、他人に興味がある」
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