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「お前基準だとハードルがぐっと下がるな」
「失礼な」
こっちが馬鹿馬鹿しくなるくらい逢生は気楽に言った。
「必死に尽くす唯冬の姿を見るのが面白い」
「そうだよなー。他の人間にも同じくらい尽くせよ。そしたら、もうちょっとは人としての優しさレベルがあがるぞ?」
遠くからわざわざ知久がつけくわえた。
もっとましなフォローができないのかと思っていたが、知久の後ろに女性がいることに気づいた。
「ナンパしてきたわけじゃないぞ」
「当たり前だ」
コンクールの運営スタッフらしくネームプレートを首から下げている。
「あ、あの、雪元さんに隈井先生が伝言があると言われて案内したんです。それで、控え室のほうに向かっていくのを見たのが最後で」
隈井先生が眉をひそめた。
そんな伝言を頼んだ覚えはないらしい。
「誰に頼まれた?」
「えっと、雪元虹亜さんだったと思います。……姉妹ですよね?」
怪しい人間を取り次いだわけじゃないと言いたいらしいが―――
「やられたね」
逢生は苦笑した。
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