第33話 君の音【唯冬】

5/8

7502人が本棚に入れています
本棚に追加
/245ページ
「お前基準だとハードルがぐっと下がるな」 「失礼な」 こっちが馬鹿馬鹿しくなるくらい逢生は気楽に言った。 「必死に尽くす唯冬の姿を見るのが面白い」 「そうだよなー。他の人間にも同じくらい尽くせよ。そしたら、もうちょっとは人としての優しさレベルがあがるぞ?」 遠くからわざわざ知久がつけくわえた。 もっとましなフォローができないのかと思っていたが、知久の後ろに女性がいることに気づいた。 「ナンパしてきたわけじゃないぞ」 「当たり前だ」 コンクールの運営スタッフらしくネームプレートを首から下げている。 「あ、あの、雪元さんに隈井先生が伝言があると言われて案内したんです。それで、控え室のほうに向かっていくのを見たのが最後で」 隈井先生が眉をひそめた。 そんな伝言を頼んだ覚えはないらしい。 「誰に頼まれた?」 「えっと、雪元虹亜さんだったと思います。……姉妹ですよね?」 怪しい人間を取り次いだわけじゃないと言いたいらしいが――― 「やられたね」 逢生は苦笑した。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7502人が本棚に入れています
本棚に追加