第33話 君の音【唯冬】

8/8
7492人が本棚に入れています
本棚に追加
/245ページ
そのドアから微かに聴こえてくるのは。 サティのジムノペディだった―――彼女の中で特別な曲になっていた。 俺が彼女だけのために弾いたあの雨の日の曲。 「もう俺だけが特別に思っているわけじゃないんだな」 開かないドアに手を触れて、名前を呼んだ。 「千愛」 「唯冬!」 応えるように俺の名前を彼女が呼ぶ。 それは特別な音。 俺にとっては一番大切な音だ。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!