第34話 その先へ

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唯冬の怒りを含んだ声を耳にして、そっとその手を握った。 「唯冬。もういいの。虹亜になにもしないで」 「俺がやったことをきいたのか」 「詳しくは知らないわ。でも私がやらせたことだって思ったみたい」 「俺が勝手にやったことだ」 「私の両親にも?」 「そうだ」 指輪をした手に指を絡めると険しい顔がわずかにゆるんだ。 大きな手。 長くて繊細な指。 この手はそんなことをするための手じゃない。 「もうなにもしないで。唯冬がいるだけでじゅうぶんなの」 他にはなにも望まない。 あなたが私の音を聴きたいと望んだから、私は今ここにいる。 「唯冬。私が演奏するのを聴いて。私がいい演奏をする。それが一番の仕返しでしょ?」 「強いな、千愛は」 「唯冬と一緒にいるから強いの」 絶対に助けてくれる誰かがいるからこそ強くなれる。 「雪元さん、そろそろ舞台袖にお願いします」 「はい」 返事をする私に唯冬は手を伸ばした。 「それじゃあ、魔法を」 「悪い魔法使いね」
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