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唯冬は私を連れて、カフェ『音の葉』を出ると店の前にとまっていた車の窓ガラスをノックした。
中には男の人が座っていて、まるっこいメガネをかけていて、分厚いスケジュール帳にせっせとなにかを書き込んでいるのが見える。
ノックされ、顔をあげてこちらを見た瞬間、驚きすぎて顔を車の窓ガラスにぶつけ、痛そうに鼻をさすってた。
「いたたたっ……って、あれっ……雪元千愛さん!?本物ですか!?」
ずり落ちそうなメガネを直しながら、さっと車の外に出るとドアを開けてくれた。
「ど、どうぞ!」
「どうしてお前が緊張してるんだ。宰田。これから知久が演奏しているコンサートホールに行ってくれ」
「知久さんの?今からだとラストの曲にしか間に合いませんよ。しかも、途中からなんて……」
「どうせ俺と逢生の席はドア近くにしてあるだろ?こないと思ってるからな」
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