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けれど、確かに伝わってくるのは音楽に対する情熱―――曲が終わるとじゃんっと言わんばかりに弓を高く掲げた。
拍手と歓声がわあっと巻き起こった。
そして不敵な笑みを浮かべると公演の成功からの高ぶりからか、恋人にするようにバイオリンにキスをした。
ぎゃーっ!と悲鳴のような声が観客席から巻き起こり、心配になるくらいの盛り上がりをみせた。
空調はきちんとしてあるはずなのになんだか熱い。
ただおじぎをしているだけなのに声はあがり続けていた。
クラッシック音楽のコンサートなのに……大丈夫?これ?と思いながら、唯冬を見るといつものことなのか、呆れた顔をしていた。
「よくやるよ……」
「唯冬もやれば、きっと盛り上がるよ」
落ち着いた声がした。
この歓声の中で落ち着いていられる人がいるなんてと思いながら声の方を向く。
すぐ前の席にその人はいた。
「逢生。お前、来てたのか」
「知久が無理やりチケットを押し付けてきたからね」
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