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「ひ、やぁ……あ!?」
「へぇ、才能あるんじゃねーの?」
……なんでだろう、
なんでこうなったんだろう。
〜数時間前〜
「あ、でも奴隷契約みたいなのは
想像しなくていいからな?
2千万円払うために俺が一旦お前を買った
ことにすれば、お前はここに住めるし、
ここから会社に通ってお金を返すことも
出来るだろ?」
「え、ほんとですね……!」
「で、ここにいる間の生活費は、
"俺の言うことを何でも聞く"
って条件で俺が払ってやる、でどうだ?」
「何から何まで有難う御座います、
何でもお申し付けくださいっ!」
社長さんは超優しかった。
「……チョロ」
「な、何か仰いました?」
「何でもない。とりあえずご飯にしよう」
そして、社長が
(正確には社長の使用人さんが)
ご飯を用意してくれた。
この部屋の雰囲気からコース料理を
イメージしていたのだが、
ご飯に味噌汁スタイルの和食だ。
「……どうした、アレルギーでもあるか?」
「あ、いえ。久しぶりに温かいご飯
食べれるなぁと思いまして……」
残念ながら俺には料理スキルが無く、
毎日コンビニ弁当やスーパーのお惣菜を
食べていた。
「そうか、それは良かった」
「有難う御座います……!」
ずっと抱きかかえた状態で
いつ連絡したのかは疑問だが、
机にはちゃんとふたりぶんの料理が
用意されていた。
「んじゃ、いただきます」
「……え、このままですか?」
もうお分かりの事と思うが、
俺は座っている社長の膝の上で
姫抱きされている。
……この状態で食べるのは、
正直精神的にも肉体的にも苦行でしかない。
「食いにくいなら俺が食わせてやろうか?」
「えっと、それもあるんですけど……
……流石に恥ずかしすぎません?」
さっきから使用人さんたちの視線が痛い。
「いや〜、眼福ですね……!」
「遂に社長も恋人がお出来に……!?」
ついでに言えば、小声でそんなことを
言っているのも聞こえてしまっている。
……俺はどう頑張れど女性には見えないと
思うのだが。
「では、使用人たちは絶対にこちらに
話しかけてくることは無いと約束しよう。
それなら恥ずかしくないだろう?」
「そういうことじゃねぇっ!!」
……しまった、社長の言ってることが
ヤバすぎて、つい敬語も忘れて叫んでいた。
真っ青になって社長を見上げると、
ふはっ、と声を出して笑った。
「お前、おもしれーな。これからは敬語も
敬称も無くそうか、うん」
そして、笑い混じりにそんなことを
言ってきた。
「え!?社長相手に流石にそれは……」
「俺のお願い、"なんでも" 聞くんだろ?」
そうか、
こういう使い方も出来るのか……?
それなら交換条件を呑んだのは間違い
だったかもしれない。
いや、どうせ死んでたんだし、
もうなんでもいいか……。
「分かったから、降ろして?」
ふたたび社長を見上げ、頼んでみる。
「ん〜、じゃあ俺のこと呼んでくれたらな」
呼んだら、って……?
「社長?」
「違う、名前教えなかったか?」
「えっと……西園寺さん?」
「残念だが、"さん"は敬称のひとつだ」
「……さ、西園寺っ」
「まぁちょっと不満だが……いいだろう」
やっと社長――もとい、西園寺に降ろして
貰えた。
こっちは体がバキバキだというのに、
向こうは60kgを抱きかかえていたとは
思えないほど平然としている。
もしや、鍛えていたりするのだろうか。
「じゃ、光希は俺の隣に座れ。
もう食ってしまうぞ?」
「えっ……おう!」
急に名前を呼ばれてびっくりした……。
ていうか、机こんな広いのに隣なんだな?
そんなことを考えつつ、
ひとつ隣の椅子に腰かける。
……絶対いい椅子だ、と素人でも分かる。
「んじゃ、いただきますっ」
「いただきます……!」
とりあえず米と味噌汁……!!
「ふわぁ!?っ、あつ…………」
……恥ずかしいことに、ついがっついて
しまった。
とりあえず飲み込み、舌を出して冷ます。
……確実に火傷した。
「おい、大丈夫か?」
「へ、ぇえっ!?」
あろうことか、西園寺は俺の舌を摘んで
様子を見ている。
撫でられると……何か、変な感じだ……。
「ひや、はの(いや、あの)……っ///」
「……っ!
……確かに、火傷してるみたいだな。
シャーベット系のアイスを持ってきてくれ」
そう言い終わらないうちに離してくれた
……のだが、もう――――
半勃ち、していた。
「洋梨のシャーベットで御座います」
「ご苦労。じゃあ、光希あーん」
「え?……んっ!」
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