俺様攻め×無気力受け(?)

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俺様攻め×無気力受け(?)

「……もう駄目だ」  会社の屋上で、ぽつり、と呟いた。  昨日、実家が燃えて無くなった。  実家だけでは無くて、 俺の父さんも母さんも弟も、 燃えて亡くなった。  そして、それを知らせに来たのは 強面のヤクザ集団で、 「お前の弟の借金を3日以内に返さないと、 死ぬより怖い目に遭うぞ」 と脅された。  ちなみに、2千万円だそうだ。  ただの25歳のサラリーマンが どうにか出来る額ではない。  ……だから、俺は飛び降りる。  死ねば全部回避、 愛する家族の元に行ける。  幸いなことにうちのビルは 58階まであるので、 落ちたら確実に即死できるだろう。 「……っ、ふぅ」  流石にお金のかかったビルなだけあって、 フェンスを越えるのも一苦労だ。  昨日は一睡もしなかったせいで、 頭がぼうっとするし、体にも力が入らない。  ただ、そんなことはもういい。  あとは下に人が居ない場所を 探して飛び降りれば―――― 「何してんだよ、死ぬぞ!?」  ぱしっ、 と、誰かに腕を掴まれた。  条件反射で咄嗟に振りほどこうとするが、 俺が弱いのかこの男が強いのか びくともしない。 「離してください、 俺は死のうとしてるのでっ」  そう言って相手の顔を じっ、 と見つめる。  ……このイケメン、 何処かで見たような……?  そんなことを思うが、 相手はぐぐっと力を込めるばかりで、 微塵も離す気配がない。  というか、痛い。 「……お前、とりあえずこっち来い」 「え……って、ちょ……!?」  彼はそんな事を言ったかと思えば、 ひょいっと俺を抱きあげて フェンスの内側に連れてきてしまった。  さっきまでは混乱していて 分からなかったが、この人は身長が高い。 俺も174cmはあるはずだが、 それでも15cmは差がある。 「で、 なんで自殺なんてしようとしてたんだ?」  いわゆる 『お姫様抱っこ』 の状態で俺を抱えたまま、彼は聞いてきた。 「あの、降ろしてください」 「駄目だ」 「は、恥ずかしいので、 降ろしてくださいっ……!」 「……っ、もっと無理だ」  ……だめだ、逃げられそうにない。 「……あの、絶対つまんない話 なんですけど――――  俺は何故か、この人に 全てを話してしまった。  喋るまでは絶対降ろさないぞ、 と目で言われている気がした、 というのもあるけれど……。  ……なんとなく、安心してしまって。 ――――で、それなら死んだほうがマシだ、 なんて考えちゃいまして……」  全部話し終えると、 彼は難しい顔をして言った。  ……ちなみに、この間(3分くらい) 俺はずっと抱きかかえられたままだ。 「お前、俺に買われる気はないか?」  ……沈黙が流れる。  ……。  …………。  ………………。 「……………………は?」  俺は、つい言ってしまった。  それからあれよあれよという間に ことは進み、現在彼―――― ……社長の家に来ている。 「ちなみに俺はこの会社の社長の、 西園寺 伊織(サイオンジイオリ)だ、宜しく」  ……そりゃあ見たことあるわけだ。 「えっ……!?あ、俺は…… 「知ってる、宗田 光希(ムネダミツキ)君だろ? 社員の顔と名前は全員把握している」  「は、はぁ……?」  そんな会話をしたあと、謎の書類に サインをさせられ、あのヤクザの所へ (なんで知ってたんだ……!?) 行き、札束をバンっと机に叩きつけて 「今回は特別に俺が払ってやるが、 次コイツに近づいたら容赦しねーぞ?」 と脅し、帰ってきた。  残念ながら俺にはよく分からないが、 とりあえず社長が助けてくれたのだろう。  なら、お礼を言わなくては。 「あの、助けて下さって有難う御座います」 「……ん、おう」  そう言って、社長は俺の頭を撫でた。  ……撫でた? 「それで、あの……降ろしてくださいっ」  ちなみにその間(多分1時間くらい)、 俺はずっっと抱きかかえられている。  現在進行形で。 「……お前は俺が買ったんだから、 俺の自由にしていいんじゃねーの?」 「……え?」  いま、 『お前は俺が買った』 という意味のわからない言葉が 聞こえた気が……? 「え、2千万円でお前を買うっていう 契約だったろ?」  社長は俺の考えを読んだのか、 俺がサインした謎の書類を見せてきた。 『人身売買についての契約書』 「……は、ぁぁあああ!?」  俺はつい、叫んでしまった。
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