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☆出会って4年くらいたったころ。牢屋での話
「何で私の監視員になったの?」
「……え?」
「私を監視するのって、皆が嫌がっている仕事って聞いた。なのにどうしてあなたは……」
「……ああ」
(最初は押し付けられたから仕方なくやってるだけだったが、今はそういう訳でもないし。別にそんなことをわざわざ伝える必要もないな)
「まあ、成り行きだな。成り行き」
「…………」
「不満そうだなぁ。……じゃあ、僕の昔の話でも聞いてみるかい」
「むかし……」
「そう。僕が君の監視員になるまでのいきさつだよ」
「人を殺したっていう話でしょ」
「仕事のことといい、なんでそんなことを知ってるんだ?僕は言った覚えが無いのだが。誰に吹き込まれたんだ」
「遠くで誰かが話しているのをたまたま聞いただけ」
「……吸血鬼って、耳が良いのか?」
「さあ。知らない」
☆牢屋から脱出後
「あ、雪だ」
「ゆき?降ってるの?」
「降ってるよ。すごい、窓の外が真っ白だ。通りでやけに寒いと思った」
「真っ白?いいな、見てみたい」
「すごくきれいだよ。見せてあげたいくらい」
「いいな。真っ暗な牢屋は嫌ほど見てきたから、今度は白が見たい」
「……そうだね。いつか君の目が治ったときのために、この景色を写真にとっておくよ」
「ありがとう。でも、やっぱり実物を見たい」
「ああ、そうだな」
「だから、その"いつか"が来るまで、私と一緒に居てね」
「もちろん。これからもずっと一緒に暮らしていこう」
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