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――帝国学校。
春の到来を告げるかのような強風が吹き抜ける大理石の表門をくぐって、まず出会うのは中庭に佇む賢者の像。
この学校の創始者となった偉大な賢者の名を、ルートブリッジはいまだ知らなかった。毎回この学校へ目的の人に会うたび、今日こそはその名を脳に刻んでいこうと思うのだが、結局忙しさを理由にいまだこの賢者の名を知らずにいるのだ。
「おや、衛士長さん、今日もチャーウィン研究室通いですか」
帝国学校の入り口で立っている受付兼警備兵は、元は衛士兵上がりの人物で、以前からの顔見知りだ。
ただ、以前は顔を見知っていただけで、先日ようやく名前を聞き出し、晴れて顔と名がインプットされて、ようやく旧知と認識できるようになった。
警備兵のゴガード氏は腰に提げた警護用ブロンズメイスを手持無沙汰にくるくると回して暇を弄んでいたが、衛士長に気付いてメイスをストンと腰に差し直し、敬礼の格好を取った。
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