推しが尊い!

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付き合うとは。 私の恋愛経験不足の脳みそが自然に「目的の場所に行けばいいの? どこまで?」とか思ってしまったが。 これは間違いなく男女交際の付き合いを指しているのだろう。 って、私と宮下君が付き合う。 ……いや、前もその事について考えたが、やっぱり色々な事を考えてしまい素直に「はい」とは言えなかった。 「あの、そんな険しい顔をしなくとも。って聞いてます?」 過去、男の人と付き合った事は一応ある。 しかし、最後まで行かなかった。 そこに行くまでに私が私の趣味や仕事を優先させてしまい相手が諦めたり、私が付き合う事を面倒だと思ってしまったり。 大概そんな感じで自然崩壊みたいな感じになった。 そもそもコスプレの話をそれとなくとすると『そーいう、プレイ』の事と思われたりした。 どうにも相手のズレがあって上手く行かなかった。 「そこまで考え込むって。そんなに僕が嫌なんですか……」 「え、あ。違うの! ちょと別の事を考えてしまって。いえ、それよりその。宮下君はわ、私の事が好きなの?」 「はい」 「……」 なんか、あっさり告白されて頭が真っ白になった。 「えっと、その?」 「普通、好きな相手じゃないとこんな事しませんってば。それとも僕はそんなに軽薄に見えますか?」 「いえ、そんな事はないけれど。その、付き合ったら教えるって、どう言う……」 そこで、宮下君は眼鏡をすっと外した。 「そんな大した事じゃないのですが。それを知られた上で僕が振られてしまったら、ちょっと流石にヘコんでしまうかなとか。だからちょっと卑怯ですが受け入れてくれるなら、僕を信じてくれるなら──打ち明けれるかなって」 そう言いながらその長めの前髪をさらりとかき上げる仕草はちょっとセクシーだった。 そしてその隠している事とはなんだろうと思った。昔の事を知られて振られる理由とは。 それも大変気になるが私も隠している事がある。 なんだかんだ言って、未だに──ド処女。 イマドキの子はひょっとしたら、そんな事を知ったらドン引きするのでは。 そして付き合う上で、否応にもいつか知られてしまうし。 って、あれ。 隠している事って宮下君も案外同じ事だったり? だから女性社員と距離を取ったり、やたらと同性の有愛さんとの距離が近かったり? 「み、宮下君の隠し事って案外私と同じ事かもしれない?」 「……それはないかな……。で、麗子部長も隠している事があるんですか? そして、僕と付き合う気はありますか?」 等と一気に責め立てくるような質問をされた。 そして宮下君は立ち上がり、私に近づいて。 私の頭を纏めていたピンをゆっくり一つ、一つ、抜いて行った。 「ちょ、あの!」 「なんですか」 「な、なにをっ」 「いつも髪を纏めているから、下ろしたところを見てみたいなって。あ、服を脱がそうととか思ってません。安心して下さい。まだそこまでの理性はありますから。で、返事は?」 その、至近距離で、だから、楽しそうな、意地悪そうな、そんな顔で、言わないで欲しい! そして、頭のピンを抜くついでと言わんばかりに私の耳たぶをきゅっとつままれた。 その刺激を誤魔化すように私は声を上げた。 「っ! い、いい加減にっ。私をからかうのもいい加減にしなさいっ!」 「ちゃんと答えてくれたらやめます」 とうとう、私の頭からピンが全て抜き取られて、ゴムも取られて、纏めていた髪がぱさりと私の肩に落ちた。 それはなんだか裸にされた気持ちになった。 そしてその髪の一房をそっと掴まれて、髪に静かにキスをされた。 それを見てもう、色々と限界だった。 私は追い詰められ過ぎて暴露した。 「あー! もう、実は処女です! そして、年下の子と付き合って、捨てられると思うと怖くて付き合えませんっ!!」 もうどうにでもなれと思った。
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