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「で、アイドル氷里とライン交換したの?」
今日の部長のファッションはフレアのスカートスタイルで可愛らしいと思った。
──まさか俺の為に。
とか妄想してしまったが、そんな事をおくびにも出さず、尚且、部長までがわくわくした瞳で俺にそんな事を言ってきたことをさらりと流した。
「そんな事してません」
「へー。仲良くしたらいいのに」
まるで、小学生に言い聞かせる先生みたいな言い方だった。
仕事が終わり、現地集合にて集まった隠れ家的なビストロ系居酒屋。
かなりお洒落な居酒屋で女性が好きそうだと思った。
「まぁ──今、宮下君にカノジョ出来たらコスプレお願い出来ないし、ま、いっか。あ、カノジョ出来たら言ってね? そこは線引きしないとねー」
そんな事を聞きながら俺は個室で目の前に並べられた色鮮で、長い名前の料理を取り分けながら「そうですか」と、短く曖昧な返事をしていた。
それよりも。
「そんな噂になっていたんですか?」
「気づかなかった? 今日は部署でその話でもちきりだったよ? 氷の男、宮下に春の雪解けが訪れる──みたいな」
「お──、僕の印象ってそんな感じですか」
部長は俺が取り分けたサラダを受け取りつつ「クールってことよ。気にしない」と、サラダをぱくついた。そして。
「デザインもクールすぎるかもね。もちろん、それが良いところでもあるし難しいけれど、んー。デザインした先に服が出来て、その人が笑っている所が想像しにくいのかな」
でも、とってもカッコいいんだけどね。と、付け出しながら烏龍茶をこくりと飲んだ。
「……難しいですね」
「ね、難しいね。でも一緒に頑張ろう」
ふふと、笑う部長。
誰でも屈託なく接して、笑えるのは素直に羨ましいと思った。
そしてありがたかった。
そのまま暫し、デザインの意見を交わしつつメインの料理も食べ終えたところで部長がうずうずと、こちらを伺うように話してきた。
「それはそうとして。どう? ヴァンパイア戦記。ルキウス様、超カッコいいでしょ?」
「正直、少女漫画と思って軽く見てたんですが、めちゃくちゃ面白いです。あとルキウス──様、本当に僕に似ていますか?」
少女漫画なのだから出てくるキャラクターは皆、美少女に美男子がわんさかだったが。
俺に似ていると言うルキウスは当然美形キャラだったが──。
「似てる、似てる! 最初人をまっったく、信用してなくて天涯孤独で戦いまくって、ヒロインの優しさに即落ちして、粘着質にヒロインを健気に守る感じが似てっ、ではなくて。えーと。凛々しい顔つきが似ているところかなッ」
そうですかと、俺は眼鏡のフレームを抑えた。
──やはり、もう少し今の俺のあり方を替えた方が良いと思った。
まぁ、いきなり変える事も出来ないが、こうやって部長と楽しく食事を出来るのは良い変化だと思った。
そうして、いろんな話をしていたらあっという間に時間が過ぎていった。
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