元ヤンキーってばれるだろうが!

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さてと。 早足で寄ってくる三人を見つめながら、俺のネクタイを掴んで離さない部長をどうするかと思いながら、小さな噴水の向こう側を見ると公園の出口が見えていた。 そして入り口付近にタクシーが運良く止まっているのが見えた。もしかしたら休憩中かと思われたが何にしろラッキーだと思った。 そして俺は。 「部長走りますよ」 「え」 返事を聞く前に部長の鞄を持って、手を引いて走り出した。 小さい公園ながら歩道がきちんと整備されていて部長のヒールでも短距離なら何とか走り抜けそうだと思った。 そして後ろから何かごちゃごちゃと喚く声がしたがもちろん無視をして走った。 「わ、宮下君は、速いっ! 靴脱げるー!」 「もう少しです。頑張って下さい」 短い距離を走り抜け、タクシーに近づくと俺は乱暴に部長と鞄をタクシーに押し込んだ。 そのまま素早くタクシーの運転手に一万円を渡して「早く出て下さい。じゃないとヤンキーが今から襲ってきますよ」と言い放つと、最初はポカンとしていた運転手が俺の後ろを見て察したのか、コクコクと頷いた。 最後に部長に一言。 「今日は食事ありがとうございました。では、また明日会社で」 そう言って、素早くドアを閉めると同時に、何か言う部長と車の発進が重なった。 ──もちろん何を言っているかわからなかった。 部長が窓をガンガン叩いていたが一応、笑顔で手を振って送り出した。 そして振り返ると、息が荒い男たち三人が俺の少し後ろに居た。 「はぁはぁ、んだお前。陸上部かよ、ふざけんな」 「くっそ、女帰しやがった。ちょっと、はぁ。好みだったのに、くそっ」 「そ、それなー……」 男たちは肩で大きく息を着いて疲れた様子だったが、その目は粘着質気味にギラギラしていた。 このまま逃げだせそうだったか、喧嘩をしかけたのはそっち。 それに最近運動不足だったしと思った。 「えっと。俺を殺すんだったか? いいぜ、やろうか」 俺はそのままスタスタと公園の雑木林の方へ行った。 男たちの反応を無視して俺は暗がりに進んだ。 男たちもバカ素直に後を着いて来ているようだった。 そして、雑木林に入り込み、そっと眼鏡を外して懐にしまった。 そして男たちと向きあった。 「さ、始めようか」 ぐっと、重心を低くすると足元の小枝を踏み抜いたようで、パキリと音がした。 その音にビクついたのか、男の一人が弾かれたように俺に向かってきた。 「いいかっこしてんじゃねー! このクソメガネがっ!」 ──喋りながら人に殴りにかかるなんて、集中してない証拠だと思った。 殴りにかかる姿勢もなってない。 始めから腕を突き出してきたので──俺も腕を、肘を外側に突き出した。 そしてそのまま突き出しパンチを肘で受けとめた。 男の手からぱきっと乾いた音と男の大げさな悲鳴が響いた。 そして俺の肘から鈍い痺れが腕に広がった。 「んな、情けねぇ悲鳴出してんじゃねえよ」 俺は痺れなど気にせず、そのまま腕を突き出した手を庇うように屈み込もうとする男の足を払った。 俺に脛を蹴られて地面にもんどり打つ男のみぞおちをきっちりと踏み抜いた。 耳にごぼりと雑音がしたが、そんな事は無視して視線は男二人に向けたまま──。 うっすらと笑ってやった。 そうするとまた、男が一人俺に向かってきた。
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