推しに貢ぐのが生きがいですから!

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推しに貢ぐのが生きがいですから!

──私は家に帰り、何度も、何度も、宮下君のスマホやラインに連絡を入れた。 タクシーに乗っている間に、警察に事情を話して公園の見回りに行って貰った。 しかし、こうやって家に帰って暫くしても何の連絡も来なかった。 警察から少しして、三人の男たちが倒れていたとう連絡がきて、その特徴を聞いて私達に絡んできた三人に間違いないと伝えた。 しかし、宮下君の居場所はようとしれず警察の人は引き続き辺り巡回するという話をして、会話が終わった。 ──三人の男たちが倒れているのなら、宮下君が何とか逃げ切ったのかと思った。 公園での宮下君はいつもの雰囲気とちょっと違ってたし、偶然見たあの体つきは弱々しいものではなかった。 きっと、大丈夫。 多分、スマホが壊されて私に連絡出来ないだけ。 きっと、大丈夫と繰り返しているうちに私はスマホを握りしめて寝てしまった。 そして、朝になり私は泥のような重い体を引きずり何とか出勤の用意をして家を出た。 勿論、スマホには何の連絡もなく。 朝のニュースには若い男性の変死体──等と、不吉なニュースもなく、私はただ会社について、宮下君の出勤を待った。 「頼むから、無事でいてよ……」 そんな独り言を何度か繰り返して、朝の朝礼15分前に宮下君はよろよろになって出勤してきた。 足取りは少しふらついていたものの、顔色は悪くなく、いつも通りきっちりとした姿だった。 ──宮下君、無事だったのね!? と、思わず声を掛ける前に氷里ちゃんが宮下君に近寄った。 「宮下クンがこんな遅い時間にくるなて、珍しいー。何かしんどそうですけれど、大丈夫ですかぁ」 「えぇ、大丈夫です。少し体調が優れなくて……気にしないで下さい」 「あ、良かったら私、頭痛薬とかお薬色々持ってますよ。ぜひ使って下さい──」 等と、氷里ちゃんが甲斐甲斐しく世話をやいているのを見て──私は、部長として宮下君に近づいた。 「宮下君。おはようございます。今、なにやら体調不良の話が聞こえましたが、大丈夫ですか? 体調管理も仕事のうちです。体調不良なら早退も──」 ──なんだか冷たい言い方になってしまった気がした。そもそも彼は私を庇って、公園に残ったというのに。 しかし、宮下君は真面目に静かに頭を下げた。 「いえ、自己管理がなってなくて申し訳ありません。昨日、古い友人に合い、少し深酒がたったようです。以後気をつけます。ご心配かけてすみませんでした」 と、言ったところで朝の朝礼が始まるメロディがなった。 私はわかりましたと、それだけ言ってその場を後にして自分のデスクに戻った。 そして氷里ちゃんが「部長こわーい」と言って居るのを聞いてしまった。 ……そんなの、私もそう思ってます──!! と、声を大にして言えない辛さがあったが、何はともあれ宮下君が無事だったのは何よりと思った。
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