推しに貢ぐのが生きがいですから!

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私。 氷里茉里。 今月イチの会議中であるが斜め向かいに座ってる宮下クンの後ろ姿を見ていた。 ──姿勢もいい。 うん、やはり良い。 私はペンをクルクル回しながら配られた紙に花丸を書いてみたりしてみた。 今、とても気になる人がそう。 宮下氷河クンだった。 ってか、隠れ宮下ファンは多い。 入社当初より寡黙で一匹狼な感じで、ルックスも悪くない。いや、いい。 そして卒なく仕事も出来る。 イケてるのに髪型なり眼鏡だったりで顔を隠しているのがもったいないと思った。 ただ、あんまり人付き合いは苦手なようで特に女性社員とは距離を保っているように思えた。 だが。 そんな事関係ない。 今、私は絶賛フリーだった。 そして年齢的にもここいらでカレシをゲットして三十までには結婚したいと思っていた。 そう、私。 氷里茉里はこれまで自分が思うように、努力をしてきた。 美容、ダイエット、勉強を頑張ってきた。 お陰で、私は今まで自分から告白したことがない。 そして今は希望の会社に入社して、さらに部署内のアイドルと言う立ち位置を確立した。 もちろん、誰に対しても笑顔で元気よくて仕事も頑張るカワイコちゃんを演じてきたからだ。 それはなぜかと言うと、そんなの。 ──金持ち、イケメンの彼氏が欲しいから! それだけである。 そしてこの会社は激務だがお給料はいい。 今、宮下クンはアシスタントだが、このまま定年までここでしっかり働くと仮定し、昇給すると計算すると──良い稼ぎを叩き出すハズ。 将来有望株を逃す手はない。 こんな事皆にばらすとドン引き案件だが、皆誰だって、女性ならシビアに相手を値踏みするなんて普通の事だと思う。 逆に貧乏でブサイクで、ニートな彼氏が欲しいと思う人はいないだろう。 中には中身が大事だとかのたまう人種もいるが、所詮、中身。表ではそんなの判断がつかない。 同じ中身で、片方が顔が良くてお金持ちだったら──言わずもがなだろう。 だいたい、付き合ってその先の──行為。 そこに至るとき、抱かれるとき、体を相手にさらけ出すのだから、その相手の見てくれが良いほうがいいに決まっている。 自分の体に触れるものが醜いものではなく、美しいものの方が良いに決まっている。 その方が私はすくなくとも愛せるだけの話し。 ルッキズム至上主義で何が悪い。 まぁ、こんな事、皆の前では口が裂けても言えないけれど。 私は私の信念のもと宮下クンゲット作戦を練る日々だった。 今日はいい感じに距離を少し詰めれた気がする。 部長がいい感じに踏み台になってくれた。 次はどうやって──とか思っていたら会議が終わった。 ふと、宮下クンを見ると部長にまっしぐらで。 何か質問をしているようだった。 ふーんと、思ってゆっくりと席を立ち、ゆっくりとわざと、横を通り過ぎるときに宮下クンが部長に、一瞬だけめちゃくちゃミステリアスな笑みを浮かべていた。 一瞬、二人は付き合っているのかと思ったが、部長も目を丸くしているようだった。 宮下クンが部長狙い!? 思わず声に出してしまいそうだったか、なんとか堪えて、後ろ髪引かれる思いでその場を離れた。 いや、宮下クンは知らないはずだ。 部長の裏の通り名。 不沈艦の麗子。 そう、どうやら部長は入社して以来一切男の気配がなし。 しかも彼氏が居ないにも関わらず、数々の男性社員に言い寄られても、全て男性社員は尽く散っていたらしい。 先輩のお局様に聞いたから間違いない。 私は最後会議室を出る瞬間、二人の様子を見ると部長が少し照れたような笑みをしていた。 ──これは、意外なライバル出現かと思った。 仮にライバルではなくても相手に取って不足なし。 麗子部長相手だったら悠著に距離を詰めてー、とか言っている場合ではないなと思った。 一気に距離を詰めてやるんだからと、私は決意を新たにした。
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