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──最初に視界に入って来たのは白色。
高い天井に天蓋から垂れ下がる白色の布。
あぁ、これが最初に俺が見たものかと思った。
そして、ゆっくりと意識が回復するのと同時にどうしようもない気怠さと頭痛が、覚醒した意識を刺激してくるのが鬱陶しかった。
「……ってか、ここ何処だ……」
あまり力が入らない身体を起き上がらせようとしたら左腕に何か柔らかい感触がした。
そして直接素肌に感じる身体を包み見込む、シーツや布団は俺の家のものじゃないと言う違和感。
……俺はどうやら裸で何処かで寝ていたらしい。
一瞬、有愛のあのホテルかと思ったが俺の腕に伸し掛かる柔らかい感触を確認したら、そうじゃないと分かった。
その柔らかい感触とは。
人。
女性。
しかも。
「なんで、氷里さんが俺の腕枕で寝てるんだ……」
意味が分からない。
脳内処理が追いつかない。
言葉に出して現状確認をせずに居られなかった。
思わず、空いている片手で布団を捲る。
「……全裸……」
未だスヤスヤと眠る全裸氷里さん。
……確かにいい胸だと思った。
少し凝視してしまったがぱっと布団を離した。
「えっと、これは」
ベッド。
男女二人。
共に裸。
きっとここはラブホ。
昨日飲んで──酔った俺。
それらが導き出す答えとは。
「え、ヤッた?」
酒の勢いにまかせて氷里さんを抱いたと言うのだろうか。
正直──この酔いの所為で出したか出してないか良く分からなかった。
「待て待て待て待て待て……」
頭痛とは違う頭の痛みを感じながら、昨日の記憶を整理する。
店でガーデンコーナーで氷里さんと会話した記憶はあるが、その後が全く思い出せなかった。
最中の記憶もなかった。
それほど泥酔していたと言う事なのだろうか。
取り敢えず、起きようと思った。
そして眠る氷里さんを起こさないようにと若干痺れている腕をゆっくりと引き抜こうとしたら。
「……ん、おはよ。ふふ。昨日は凄かったね」
起きた。
俺の心臓が止まるかと思った。
しかもゆっくりと俺の首に両腕を回して来て抱きついてきた。
──何が凄かったのか。
この胸が凄かったのか。
否応なしに素肌に触れる柔らかい胸の感触が俺の思考回路をグズグズにする。
何も出来ず、言い返す事も出来ずただ氷里さんの言葉を聞く。
「ラブホに入るなり、いきなり襲ってくるんだもん。びっくりしちゃった。ふふ。でも。すっごく良かった。ねぇ、まだ時間あるし、もう一回する?」
そのままガバリと、氷里さんが俺の上に体重を乗せて来て俺を押し倒すような体制になり、足も絡ませてくる。
「ちょ、ちょっと、待って」
「宮下クンって、伊達眼鏡だったんだね。顔、カッコいいのに隠すの勿体ないよ……」
と、言いつつ俺の首筋に舌を這わせてきた。
ちゅっと、音がして。
氷里さんの手が俺の下半身に伸びてきた。
「っ、待って」
──待ってて、言ってるだろうが。
ってか、俺は女の下になる趣味はない。
痛む頭を無理矢理、覚醒させて纏わりつく身体を力技で反転させて、俺が上になった。
いたずらされないように両腕をがっちりとオレの手で抑える。
きゃっと、氷里さんは小さな悲鳴こそ上げたが、俺と視線が合うと──大きな瞳に挑戦的な余裕が見て取れた。
そして形の良い唇は妖艶な笑みを浮かべていた。
普段の人形めいた微笑みより、こう言う笑みの方がよっぽど似合う女だなと思った。
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