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翌日。
私は水を得た魚のように、昨日の不調が嘘のように、バリバリと仕事をこなしていた。
昨日の残業をまずは秒速で終わらすためにパソコンのキーボードを無心に叩いてた。
私は企業でデザイナーをしているいわゆる企業デザイナーと言う訳で。
出勤したらタスク整理から始まり、デザイン画作成は毎日のこと。
その間に企画会議・社外の関係者と打ち合わせもたくさんある。
最新情報や流行の調査も欠かせない。
服のコンセプトを決めるだけでも、その時々の流行だけではなく、トレンドの色や素材、形をうまく取り得て年代にマッチングしたものを、さらに
価格も重要で──。
つまり。
「やることが多いのよね……」
モニタから目を離さずに小さな独り言を言う。
しかし、やることが多くて、しんどくても自分のデザインの服が店頭に並ぶとそんな事は、あっという間に吹き飛ぶ。
さらにその服を着用している人を見ると天にも昇る気持ちになる。
だから、頑張れる。
頑張ろうと思う。
しかし、あくまでそれらは仕事としての気概。
個人的な超・プライベートな気概の根幹として。
私は日々のモチベーションとして私には『推し』が大切だった。
推しがいるから貢がなくては。
推しに恥じない行動を。
推しを支えたい。
それらが個人的なモチベーションであり、生きがいでもあるのに。
カタカタと叩くキーボードが一瞬止まり──。
「なのに、推しが死んでは意味がないッ!」
言葉と共に私は先程よりハイスピードでキーボードを怒りと悲しみを指先に乗せて叩きまくる。
だが、宮下君の登場で。
リアルにてルキウス様のご尊顔解釈一致の希望を見つけれた。
漫画の推しは死んだが、心で生きている。と、宮下君のお陰で思えるようになった。
当然、いつまでも宮下君にルキウス様のコスプレをお願いしようとは思っていなかった。
せめて。
せめて次のコンペまで。
我が会社が二年に一度、社を上げて行うコンペが一年後に控えている。
会社の顔である二大ブランド、私が所属する20代から30代をターゲットにした「リリィ」とミセス達へのハイブランド「モルガナ」のガチンコ対決。
これに優勝するとその一年、新規オープンする店に優勝したブランドが選ばれる。
その他にも色々と優遇されることや、自分の評価にもつながる。
しかし、もちろん私以外ににもリリィのデザイナーは居る訳で。
まずは半年後に開かれるリリィでの社内コンペに勝ち上がり、リリィの代表にならないといけなかった。
「まずは、代表狙うんだからっ──!」
私は野望と期待とルキウス様への愛でキーボードを叩きまくった。
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