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部屋の隅に置いた水色のトートバッグへ視線が吸い寄せられる。
実家から持ち帰った思い出の箱を取り出した。
真帆ちゃん……今はどうしてるのかな。
あれから十年だ。
小四の夏休み、私は親友とも呼べる真帆ちゃんと離れ離れになった。
引っ越しから数年続いた手紙のやり取りは、ある時からパッタリと途絶え、私自身も彼女を思い出さなくなった。残った便箋もその使い道がなくなり、大掃除か何かの時にゴミ箱へ捨てたはずだ。
ベッドに座りながら彼女が想いを込めて作ってくれたフェルト製のお守りをぎゅっと握りしめた。
カサ、と乾いた音が耳朶をなでた。
紙か何か入ってる……?
不意にお守りの中身が気になった。通常、神社で買うようなお守りは中身を見ないのがお決まりのはずだが、これは手作りだから構わないだろうと思った。颯爽と腰を浮かせた。
黄色いフェルトを赤い糸でしっかりと縫い合わせているので、刃の小さな眉毛バサミを使って中身を取り出した。
小さいけれどひと目で手紙だと分かった。あの頃教室で流行っていた折り方を懐かしく思い、中を開く。
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