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殺し屋といつもの夜
拳銃の安全装置を外しながら、また今夜も眠れない、とレイラは溜め息を吐いた。凍える夜の空気の中、レイラはレンガ造りの橋がよく見える林に潜り込み、木陰に身を潜めて、もうじき通るはずの辻馬車に照準を合わせていた。
今夜レイラが殺害するよう命令されたのは、グレゴリー卿の派閥に属する由緒正しい伯爵家の長、スペンサー伯爵だ。スペンサー伯爵はグレゴリー派の中でも大きな勢力を持っている伯爵家の一つであり、レイラの雇い主であるモートン卿にとって邪魔な存在だった。
モートン卿は以前からスペンサー伯爵を疎ましく思っていたが、表面上は体裁を取り繕い、我慢強くスペンサー伯爵を暗殺するチャンスをうかがっていた。
スペンサー伯爵は用心深い人物なので、少ない護衛で人気のない道を辻馬車で走ることはめったにない。基本的に厳重に警備が固められた自分の屋敷から出たがらない人物なのだ。
しかし、そんな彼も、隣国と外交をする際だけは屋敷を出ないわけにいかない。警備の薄くなるそのタイミングだけが、彼を殺害する唯一のチャンスだった。
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