さよならモルテ

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「ごめんなさいね、モルちゃん。──いやレイラちゃん、というべきかしら」  意味深な瞳でレイラの名前を呼ぶリアは、昼間の豪華なドレス姿とは異なり、動きやすい服に身を包んでいた。状況を飲み込めないレイラが口を利けずにいると、説明すべくリアが口を開いた。 「──そんな顔をしないで、レイラちゃん。大して不思議なことじゃないはずよ。私だって政治家の娘ですもの。命を狙われる可能性を見越して、幼い頃からいろいろと仕込まれていたの。教え込まれたのは政治や心理学だけじゃないわ。護身術や体術、拳銃の扱い方諸々、…それこそあなたみたいにね。これでも観察眼には自信があるのよ。だから、レイラちゃんがモートン卿の優秀な右腕として何人か手に掛けてきた暗殺者だとういうことは、言われるまでもなく知っていた。……だから、これ、」 リアは空いている方の手で手紙を取り出すとレイラに見せた。 「こんなものもらわなくったって、私、レイラちゃんを助けるつもりでいたわ。もちろんあなたのメイドのお友達も、それからディーンや従者のみんなもね」 リアは手紙を上着のポケットに戻すと話を続けた。 「私はモートン卿の(もの)でいたくないの。鳥かごに閉じ込められた生活なんてまっぴらよ。レイラちゃんも自由になりなさい。あなたは殺しを強要されるべき人じゃないわ。モートン卿の利益のために犠牲になって、心を痛める必要なんてないのよ」  話の流れが飲み込めず、レイラは懸命に状況を整理した。  どうやらルイは本当に隣国の王子で、リアと同盟を組んでいたらしい。
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