さよならモルテ

4/7
前へ
/121ページ
次へ
「レイラ」 「やめて、その名前で呼ばないで!」  レイラは反射的に遮った。 「どうして? 君はレイラだ」 「違う、モルテよ!」  涙目で叫べば、ルイは立ち上がってレイラに近寄り、レイラの拳銃を持っていない方の手を両手で包み込んだ。 「レイラ、僕に君を助けさせてくれ。この手がこれ以上したくないことをしなくていいように、僕に守らせてくれないか」  レイラは包まれた手を振りほどこうとしたが、まるで力が入っていない気がして怖かった。  だから言葉で強がるしかなかった。 「どうして? あなたにそんなことする義理はないはずよ」  ルイはレイラを真摯な眼差しで見つめた。 「本当にね、君と出会うまで僕は落ち込んでいたんだ。消えてしまいたいとすら思っていたよ。でも君を見つけて、生きることに意味を見出せた。大嫌いだった貴族という地位も、君を守る矛になるなら捨てたものじゃないと思えたんだ。きっとね、僕は君と出会うためにここへ来たんだよ。信じて。僕は君の敵じゃない。君を守るためならどんなことだってする」  真っすぐ熱のこもった瞳で見つめられ、レイラは息を飲んだ。  こんなふうに見つめられるのは初めてで、どうすればいいのかわからなかった。間近で目が合って居心地が悪いような気がするのに、高鳴る心臓が頬を染め、自分から視線を逸らすことができなかった。
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加