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レイラは二人のやりとりをどこか他人事のように聞きながら、これまで自分のことを「レイラ」と呼ぶのはミアだけだったから、ミア以外の人にレイラと呼ばれるのは不思議な感じがするなと思った。
──もう殺しをしなくていいだなんて、まるで夢のようだった。
こんな日が来るなんて。
様々な思いが駆け巡り、レイラは力が抜けて座り込んだ。
「おっと、大丈夫?」
レイラを抱き止めようとしたルイも隣にしゃがみ込む。
ルイはレイラを安心させようと彼女の背中を何度かさすり、「…ゆっくり深呼吸してみようか」と言った。
言われるがまま、レイラは深く息を吸い、時間をかけて吐き出した。
「…大丈夫、ありがとう」
レイラが言えば、「よかった」とルイは安堵して顔をほころばせた。
そしてレイラの頬を両手で包み込み、目を覗き込んで言った。
「──いいかい、レイラ。〝モルテ〝なんて重たい名前、今日限り、君にはもう必要ないんだよ。これからは自分の名前を大切に生きるんだ。ご両親が君につけてくれた、レイラという愛の籠った名前をね」
気が付くとレイラは泣いていた。
ルイの手が優しくその涙をぬぐう。
ルイに間近で泣いているのを見られるのが恥ずかしくて、顔を逸らそうとしたけれど、やんわりと制された。
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