殺し屋といつもの夜

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「モルテ、彼奴(きゃつ)(スペンサー伯爵)を消せ。今夜彼奴は隣国に出向く。分かっているだろうが失敗は許されない。これほどのチャンスは二度と訪れない」 「承知しました、我が主(マイ・ロード)」  モートン郷はレイラのことをモルテと呼ぶ。モルテはレイラに与えられたもう一つの名前だ。レイラがモートン郷に絶対服従する所有物である証。モルテとはイタリア語で死に神を意味する言葉。  レイラは言葉の意味を知ったとき、モートン郷に命じられるまま人の命を奪いに行く自分にぴったりな穢い名前(首輪)だと思った。  自分では外すことのできない、呪われた名前(運命)。 レイラにとってモートン郷は絶対だ。 絶対的な主なのだ。
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