殺し屋といつもの夜

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 まず算段として、一発目の狙撃でスペンサー伯爵の頭を撃ち抜き、絶命させる。そして二発目で馬車の車輪を撃って金具を壊し、馬と業者が乗っている部分を切り離す。狙撃の衝撃で車輪が壊れ、バランスがとれなくなった馬車は伯爵を乗せたまま川に落ちる。  わざわざ連結部を切り離さなくても暗殺することは可能だが、それだと手綱を引く業者まで川に落ちてしまうかもしれない。レイラは奪う命を最低限に抑えたかったので、業者を巻き込まない方法を考えた。前後の護衛を殺さないためにも、スペンサー伯爵は一発で仕留めなくてはならない。  もし外して中途半端に怪我をさせてしまったら、前後の護衛に気づかれて、護衛の人間も殺さざるを得なくなるかもしれない。そのような事態は避けたかった。 〝一発だ。一発で仕留めなくては〟 レイラは事前に立てた計画を、時間が許す限り頭の中で繰り返し復唱した。
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