殺し屋といつもの夜

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 レンガ造りの橋の上は石畳になっており、等間隔で置かれている街頭から申し訳なさ程度に灯りが落ちていた。その薄黄色の灯りがレイラにとっては狙撃のタイミングを計る目安になった。  レイラは片目をつぶり、拳銃を持つ右手を左手で支え、何度も照準を細かく修正した。計画を完璧にこなすためには、微塵のズレも許されない。ここだという完璧な位置を見つけると、レイラはその体勢のまま、じっと馬車が来るのを待った。  やがて少し遠くから、コツコツと馬の蹄が石畳を鳴らす音が響いてきた。音はだんだんと大きくなり、着実に近づいているのが分かる。レイラは耳を澄ましながら、馬車がどれくらいの距離にいるのか測った。絶えず耳を研ぎ澄まし、しかし目は拳銃の照準から放さない。そして視界の端に馬の頭が入り込んだその瞬間、レイラはすっと息を止めた。
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