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「……っ」
パン!パン!
まず一発、そしてすぐにもう一発、レイラは恐ろしいほど的確なタイミングで射撃した。夜の冷えた空気の中に乾いた破裂音がこだまする。役目を終えた拳銃からは薄く煙が立ちのぼっていた。
レイラが撃った最初の一発は見事スペンサー伯爵の頭を撃ち抜き、粉々に割れた馬車のガラスが花火のように周囲に飛び散った。次いで撃たれた二発目も計画通り馬車の車輪の金具を壊し、均衡の取れなくなった馬車は大きく傾いた。異変に気付いた業者が慌てて、思いっきり馬の手綱を引いた。突然喉元を締め付けられた馬が驚き、大きな声で苦しそうにいなないた。
馬と業者はなんとか橋の上に踏み留まることができたが、スペンサー伯爵が乗っていた後部座席は、無慈悲にも橋の上から真っ逆さまに川へと落ちていった。
バシャン!と大きな音がして、何事かと前後の護衛が馬車を止めて降りてくる。
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