家庭の香り

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 事前に借りた公共広場で、僕らは智哉が来るのを待っていました。 彼一人が集合時間に連絡も無しに遅れていたんです。  結果として十五分遅れで来たんですけれど、僕らは苛立ちを露わにするより笑ってしまいました。  なにせ、智哉が乗っていた自転車の籠に鋸や金槌がパンパンに詰まっていたんですから。 鋸なんて焼印の入った本格的な一本でしたよ。 「智哉、それ、警察に見つかったら捕まるぞ」って、げらげら笑ってましたね。 智哉は慌てて来たんだから仕方ないだろって、逆に怒気を孕ませてましたけど。  智哉が遅れた理由ですか?  道具探しに手こずったと言ってましたよ。 物置にあったそうです。  作業は楽しかったですよ。 今でも覚えているくらいですから。
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