家庭の香り

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 初めて智哉の家に招かれたのは……あれは六月も末のことでしたね。  きっかけは忘れちゃったんですけど、智哉が僕を含めた友人三人に「ウチへ来ないか」と誘ってきましてね。  突然ですよ、突然。 普段から自己主張しない智哉がどこか目を輝かせて誘ってくるんですから、そりゃあ僕らも面食らいましたよ。  もちろん、嫌だったわけじゃないですよ。 むしろ心底嬉しかったくらいで。  だって、ほら。 小学生の頃なんて特別扱いは一種のステイタスですし、なにより、家に招いてもらえるだけの信頼を得ていたのだと言外(げんがい)に知れたわけで……有頂天にもなりますよね。  後から聞いた話によれば、僕らが招待客第一号だったそうです。
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