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「なんとも憐れだったよ。バシャバシャと水しぶきをあげて助けを求めるあのザマ…。地面でのたうちまわっているフナと、一瞬にして同格となったあのザマは」
くくく、と肩を震わせ笑う校長の後ろ姿を息を飲んで見つめる。
実は校長の足が当たったことで、鍵は先ほどよりもこちらに近い距離に迫ってきていた。
…あれならもう一度足を伸ばせば届くかもしれない。
けれど、校長がいつこちらを振り向くかという恐怖と、次の言葉が予測できない不安とで行動に移すことができない。
「そっ…それから、その子はどうなったんですか?」
俺からこれを聞くのは正解なのか…。
けれど、この時は鍵を取ろうとすることも忘れて俺はじっと校長を見張った。
「もう一人の子がね、慌てて落ちた子を助けようとしていたのさ。だからそいつも池に突き落としてやったよ。そいつらがフナにしていたように、思い切り蹴っ飛ばしてね」
「……っ!?」
「まぁその時にはもう、最初に落ちた子は池の底に沈んでいってたけれどねぇ…。そんな私たちの様子を見て、斗真くんはどうしたと思う?」
くるりと向き直り、校長は首をほんの少し傾けた。
俺は伸ばしかけていた足を咄嗟に引っ込める。
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