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児童の父親が殺された。
そう、今や都市伝説と化してきている魚男に。
よりによってうちのクラスの子の父親だ。
厄介なことになったぞという感情を、頭を振って拭い去る。
今は何より、子供たちのメンタル面に意識を向けなければ。
「玉井先生!」
校長室から出たところを、3年2組の担任である桂木先生に呼び止められた。今日も相変わらず美しい。絹のような黒髪がなびいている。
「大変でした…ね。なんでも殺され…、亡くなった方は室井 智徳くんのお父様だとか」
「えぇ、参りましたよ。魚男の奴…ついにこの市内周辺にまで現れるようになっただなんて」
左手を頭の後ろにやり、目を伏せる。その時、互いの足元がハッキリと視界に入った。
あぁ、どうりで…。
彼女が履く真っ白なヒールは5センチほどの高さがありそうだ。
目の前にいる彼女は身長175センチの自分と大差ない。なんでも、学生時代はバレーボール部所属だったらしい。
「やっぱり魚男の犯行なんですか?この近辺での被害なんて今までになかったのに…」
「はい。死体の口の中には生の鱒が突っ込まれていたらしいので、警察は魚男の犯行と読んでいるみたいです。それに噂に聞く通り、今回も腹の肉を切り取られていたとの…」
そこまで言いかけてハッと口をつぐんだ。
顔を正面へ戻した瞬間、手で口元を押さえ怪訝な表情を浮かべる桂木先生の様子が視界に飛び込んできたからだ。
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