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遥さんは少し驚いた表情で私を見ている。
私は恥ずかしくてあまり彼の顔をまともに見ることができず、視線をそらした。
すると、彼が静かに質問を口にした。
「それは、俺との結婚を承諾していると解釈していいのかな?」
その言葉にどきりとして、私はもう一度彼に目を向けた。
鋭い視線をまっすぐに向けられて、体が硬直する。言葉も出てこなくて、もしかしたらこのまま見つめられて死ぬかも、などと覚悟した。
私が黙ったままでいると、遥さんはふっと小さく笑った。
「ごめんごめん。急に訊かれてもすぐに返事はできないよね。でも、頑張ると言ってくれたから少しは期待しててもいいのかな」
私は遥さんを見て、顔が熱くなり頭がぼうっとした。
なんて穏やかに笑う人だろう。
なんて優しく話す人だろう。
なんて誠実そうな人だろう。
何か返さなきゃいけないと思い、慌てて返事をしようとしたら、一歩足を踏み出した拍子に小石につまずいて足を捻り、前のめりになった。
「わっ……!」
ふわっと柑橘系の爽やかな香りがして、軽く肩を掴まれるように支えられた。
「すみません」
「大丈夫?」
見上げるとすぐそこに遥さんの美しい顔があった。
ううっ……尊い!!!
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