プロポーズの相手

6/18
5213人が本棚に入れています
本棚に追加
/556ページ
 週末に正史郎おじさまがうちにやって来た。つまり、遥さんの父親であり、私にとってはもうお義父さまということになる。  だけど、お義父さんなんてまだ言えなくて、おじさまと呼んでいる。 「いろはちゃん、元気でやってるかい?」 「はい、とっても元気です」  と笑顔で答えてみたものの、別居中なんだよね……。  今日は父が仕事でいないので、母とおじさまと三人で食事をすることになった。母はおじさまの大好物であるミートグラタンパイを作った。母手作りのミートソースとチーズがたっぷりのパイである。私も大好きでたまに作ることもある。成功したことはないけど。 「いやあ、本当に、かえでちゃんの料理は美味いなあ」 「まあ、奥さんの料理のほうがいいでしょ」 「それはまあ、ね」  おじさまは照れくさそうに肯定する。  きっと美景さんのことをとても大切にしているのだろうなあと思う。 「いろはは料理が下手で、遥くんに申しわけないわ」  突然母がそんなことを言って、私は食べているパイを喉に詰まらせそうになり、急いで水を飲んで流し込んだ。 「おじさまの前でそんなことを言うなんて。そりゃ、遥さんに比べたらぜんぜん駄目だけど……」  ぶつぶつとそんなことを言っていたら、おじさまが驚いた顔で訊ねた。 「遥は料理ができるのか?」  え……おじさまは知らないの?
/556ページ

最初のコメントを投稿しよう!