プロポーズの相手

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 今までずっと、思い出したくてもよく思い出せなかった幼いときの記憶がはっきりとした。すっきりしたと同時に複雑な気持ちになる。  え、何……まさか、遥さんはそれを本気にしてずっと私のことを追いかけていたの? いや、まさか……さすがにそれはないよね。だって4歳の子に結婚なんて理解できるわけがないんだから。それくらい、わかるでしょ。  夕食後に部屋へ戻ったけど、勉強が手につかないのでベッドに寝転がってスマホをいじっていた。そして私の指は勝手に遥さんの着信履歴を押していた。  だけど――。 『ただいま電話に出ることができません』  忙しくしているのかもしれない。  そういえば、頻繁に連絡ができなくなると言っていたし。  昨日も電話が来なかった。  メッセージをしてみたら、今朝になって返信があった。  私はいつの間にか、遥さんと毎日連絡をすることが当たり前になっている。だからこそ、連絡がなくなると不安になってしまう。  メッセージをしてみたけど、返信はない。 「お互いに忙しいんだから」  そう言い聞かせて、数学のノートを開いた。  この夜も、翌朝も、メッセージの返信はなかった。  それどころか、彼との連絡が途切れてしまったのである。
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