まるで少女漫画のように

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「いろは、きちんとご挨拶しなさい」  母に声をかけられて我に返り、すぐさま姿勢を正して笑顔を向けた。 「いろはです。どうぞよろしくお願いいたします」  緊張はしているけれど、丁寧にはっきりと言った。するとおじさまがにこにこしながら答えた。 「私は正史郎(せいしろう)。そして妻の美景(みかげ)だ」  紹介された美景さんはにこやかな笑顔で会釈をした。美人でふんわりとした雰囲気の人。結婚をしたらこの方がお義母(かあ)さまになるのね。  確か、後妻と聞いていたから、結婚相手の彼とは血の繋がりはないということだ。 「覚えているかな? 君が小学生の頃よく会っていたんだよ」  おじさまがそう言ってくれて、懐かしさについ笑みがこぼれた。 「はい。お誕生日にドールハウスをくださいましたよね。とても嬉しくて、今でも大切にしています」 「そこまで覚えていてくれたのか。嬉しいね。ありがとう」 「こちらこそ、ありがとうございます」  お辞儀をするたび腰の帯がきゅっと締まってなんとも動きにくいけれど、笑顔で乗り越えよう。  とりあえず、会話をしたおかげで少し緊張がほぐれた。
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