雨ニ狂ウ

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 枕元で激しく振動するスマホの傍で、私は、男と気の遠くなるような快楽を共有していた。  酩酊するかのような、恍惚の時を経て、男の腰の動きがゆっくりとなり、やがて止まる。私はすっかり虚ろになった身体を弛緩させて、その身をどさりと、布団の上に崩れ落とす。そうして、私たち2人は、ベッドの上で生まれたばかりの姿の互いを重ね合わせ、息を弾ませながら、情事の余韻を味わっていた。  どのくらいの刻が経ったか、男はベッドから立ち上がって、冷蔵庫に裸体のまま歩み寄ると、中から勝手にミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、栓を捻りそれを飲み出した。  私は私で、乱れた髪をかき上げながら、さっきまで五月蝿いほどに鳴り響いていたスマホを漸く手に取り、留守番電話に耳を傾けた。 「誰から?」 「美穂から。塾が終わったけど、ゲリラ豪雨が来そうだから迎えに来て、だって」 「美穂ちゃん、今日も夏期講習行ってんのか。えらいなあ」 「そりゃ、もう中3の夏なんだから、しかたないわ。母子家庭には塾代も大変なのだけれど」  私は身体にバスタオルを申し訳程度に巻き付け、ベッドサイドに腰掛けると、スマホを操作した。暫しの呼び出し音ののち、美穂の声が鼓膜を叩く。その声は、少し怒気をはらんでいた。
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