通り過ぎる雨の向こうに

1/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
窓の外では、雷鳴がゴロゴロと不穏な音を立てながら、街の上空に君臨していた。 ただでさえ蒸し暑い夏の昼下がりだ。 灼熱の太陽は、いつの間にか青い空をすっぽりと覆ってしまった厚い雲の裏に隠れてしまったものの、ムッとするような湿気を含んだ風がアスファルトを撫で、じっとりと、首筋に汗を浮かべさせてくる。 もう、幾ばくもしないうちに、叩き付けるような雨が降り注いでくることだろう。 冷たくはない、でも、圧倒的な質量で押し潰してくるような、激しい通り雨が。 短い間に、昼間の熱い空気も、残さず流し去ってしまうだろう。 先ほどこの部屋から出て行ったきみの足取りもまた、流し去ってしまうことだろう。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!