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ギリギリになってしまった電車に乗り込むと、すぐ背後でプシューと扉が閉まる。座れる所を捜していると、近くでひとり分の間を見付けた。
「唯月が座りな」
「私は大丈夫。灯路ちゃんが座って」
「俺の方こそ大丈夫。それよりつり革掴めないんだから、唯月が座っとけ」
意地悪くにやと笑って、無理やりにと言った感じで座らせられる。
「ありがとう。じゃあ座らせてもらうよ。でもつり革は掴めるからね」
ギリだけど、と言うことは黙っておく。
私の身長の低さを突いてきたことに対しじっと見上げて言うと、ははっと笑いが降ってきた。
灯路は私の幼なじみ。家が近所と言うこともあって、幼稚園に行く前からよく遊んでいた。
大学がある都心と違い、私達が住んでいた地域は田んぼや畑なども所々にあって、都会ではないけど田舎でもないそんな所だった。
ただ、私はもうそこに住んでいない。慣れ親しんだ地を離れ、今はひとりで暮らしている。
明るい色をしたショートの髪型。笑顔を絶やさない灯路は笑うと目尻に皺が走る。笑顔が素敵なことと性格が良いことで、彼の周りは人も絶えない。
電車はスピードを上げ、走る。
「そう言えばさー、こんな話知ってる?」
電車が動き出してしばらく、前に立つ灯路はスマホを渡してきた。何だろう? と手に取り画面を見る。
『この地球に住んでいるのは、人間だけではない』
ネットニュースの記事か何かで、気になる見出しが大きく書かれていた。
『我々は住む場所により肌の色や目の色が異なり、住む場所により生活環境も異なる。だがそれは至極当然のことであり、生きる者ならば周知のことである。
そして地球にはいわゆる、科学では解明出来ないものも存在する。
幽霊、妖怪、悪魔、宇宙人……。
翼を持ち空を飛ぶペガサス。爬虫類の見た目に羽の生えたドラゴンと言った想像上の生き物。
満月の日に人間から狼に変身する狼男。牛頭人身姿のミノタウロス。上半身は人間で下半身は魚の人魚と言った、怪物と呼ばれる存在。
色んなものが混在する地球に、この名前を一度は聞いたことがあるだろう。
――ヴァンパイア、と。
人間の生き血を吸い生きる。吸われた者は死ぬとも、同じくヴァンパイアになってしまうとも伝わる存在を。
もちろん想像上の、架空の生き物である。
でももし、本当に存在しているとしたら――』
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