1話 ー真紅の瞳と紫の瞳ー

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「タタン、タタン……」  走る電車の音がBGMに、読み終えた私はえ……? と見上げた。 「これって灯路ちゃんが好きな、いわゆる都市伝説的な話だよね?」  尋ねてみると、灯路はにやりと不敵に笑みを浮かべる。 「それがさ、本当っぽいんだよ」 「本当って……。確証出来るものがあったって言うこと?」 「うん。ある動画が拡散されてたんだけどさ、これ見てみて」  そう言ってスマホを覗き込み、手早く保存された動画ファイルを再生させた。  そこには薄暗く、狭い景色が映っている。家の壁と壁が連なり出来た細い路地裏であることが分かり、撮影者はゆっくりながら奥に進んでいた。 「この人は路地裏マニアらしくって、普段から全国の路地裏を回っては、こうやって撮影してたんだって」  補足を耳に、映像を見続ける。  撮影時間は夜に差し掛かろうと言う夕方。冬である為か辺りはすでに暗い。所々家屋から漏れる明かりはあるものの、殆どが空き家となっているのか、路地の中は更なる闇になっていた。  どんどんと進んでいき、やがて心許ない明かりの下、何かを見付けた撮影者の足が止まった。  ふたりの男女がいる。少女漫画何かである壁ドンのシチュエーションで、女性は壁に押し倒されていた。男女は熱いキスを交わし――見てはいけないものに、撮影者は慌ててカメラを外し、引き返そうとした。  しかしあれ? と撮影者が呟く。再びカメラがそちらに向けられると、女性は壁伝いにずるりと落ちる。その全身は何故かミイラみたいに干からびていた。  突然のことに。いや起こり得ない光景に、撮影者は言葉を失って固まっていたのだろう。  顔を伏せていた男性がゆっくり顔を上げ、撮影者の方を見た。  ――闇夜にも関わらず輝く真紅の瞳。  口には赤いものがべったりと付着し、口端からはそれが伝い落ちていた。  想像するに赤いものは血であり、見た瞬間私はハッと息を呑んだ。
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